マスターブロッサムゴリスーツ

山田くん座布団5億枚

1-1

君らは増えすぎだ。
今、君らに必要なものは…
ユルヤカな衰退だ。
滅亡は繁栄した生物の末路だ。
このまま人類がこの世に存在し続ければ、我々の子孫に残された道は滅亡であることは明らか。
人類が滅亡するとしたら、その方法は天変地異でも核戦争でもない。自殺だ。
人類を滅亡させない最善策を、我々は採ってあげてるだけだよ。
誰も哀しまずに済む方法だ。




日々生命を科学する平凡な学生たちがいた。

ある日、一つの細胞が彼らを魅了し熱狂へと駆り立てる。

細胞が導く先には人類の栄光があるはずだった。

しかしその先に本当にあるものに、彼らが気づくにはあまりにも若すぎた。

 

夜明けなのか、それとも夕暮れなのか。
そんな曖昧な時間のできごとだった。
味気ない研究室。
棚には何者かが入ったビンが丁寧に並べてある。

部屋の中央あたりには、手術台に見立てたテーブル。

そこに、割と図体の大きな男が横たわっている。

大男の肌はハリがある。

しかし髪の毛は抜け落ちているようだ。

大男の横には痩せ気味の、長髪の男が無表情に立っている。

圧倒的に痩せている。

2人とも若いが病的な雰囲気だ。

「…やるぞ」

痩せ気味の男は力なく言った。首筋にはひどい汗。

「ああ…、たのむよ…」

痩せ気味の男とは対照的な太く力強い声だ。

痩せ気味の男の手が動き出す。

腐った豆腐でもいじるような音と、金属がこすれるような音が静かな研究室を巡った後、冷たい壁に次々と吸い込まれていく。

次の瞬間、視点は新宿歌舞伎町に移る。

その二つの視点は対照的であり、同時にどこか共通の属性を感じさせる。



第1章1節
あたりが明るくなった。視点は男の部屋。

若い男の一人暮らしの典型をはめ込んだような部屋だ。

細い腕が伸び、目覚まし時計をつかむ。

数秒、時計と男の顔がにらめっこした。

夢と現実の整合性を取るに足るだけの数秒。

男は時計を乱暴に置くと、慌ただしく部屋を駆け回り身支度をはじめる。

部屋に落ちている服を着る。

鞄にはパソコンと何冊かの本を詰め込む。

最後に鏡の前で髪の毛を数回なでて整えた(フリをした)後、すぐに部屋を飛び出した。

部屋は生暖かく、脂っぽい匂いがしている。

ゴキブリが数匹顔を出した。





主人公:アキヤマ(細胞研究室発起人)

脇役:マツモト(細胞研究室エンジニア)

脇役:ユウキ(細胞研究室エンジニア)




研究室の扉が開く。

アキヤマが息を荒げて中に入って来た。

室内に入ると、マツモトとユウキが興奮気味に話している。

アキヤマの入室にはまだ気がついていないようだ。
「にしても、見たことない細胞だなぁ。もしかして新種かな?」

ユウキというメガネをかけた細身の男が問いかける。
「おそらく、いや間違いない。」

マツモト。筋肉質で頭が悪そうな見た目だが、実はメンサに所属するほどのIQをもつ。
「っていうかそもそもコイツって細胞なん?」

「たしかに見た目は細胞じゃなさそうだ」

「もしかしたらただのウイルスかもな」

「否めん。自己増殖でも確認できたら…」

2人の会話が一段落したときユウキが、アキヤマが来たことに気づいた。

「おぉ、アキヤマ遅せーよ」

「あ、あぁごめん」

「とりあえずこれ、見てみ?」

「え?何かあったん?」

「マツモトが新種見っけちゃったんだよ」

「まだ新種と決まったわけじゃない。」
「いや、間違いない。こいつは新参者だよ。」
「このハゲのどこが新参者なんだよ」

「違げーよ、この細胞だ」

「なんだ細胞が見えるのか?早く言えよ!」

アキヤマは興味津々に顕微鏡を覗きこむ。

中で何者かがうごめいている。

「2匹か…」

アキヤマがつぶやいた瞬間、マツモトとユウキはピクリとした。

「1匹だ」

マツモトが言った。

「いや、2匹いる」

アキヤマが言った。

「ちょっと見せろ」

ユウキが言って顕微鏡を覗き込んだ。

「おい、マツモト…このプレパラートには一匹しか入れてないよな?」

「断言できる。」

とマツモト。

「僕らもしかして本当にやっちゃったんじゃないか?」

「やっぱ2匹なのか?」

とマツモト。

ユウキが震えながら立ち上がり言った、

「アキヤマ、マツモト…こいつ新種だ。」





TO BE CONTINUE

次回予告

ユウキ:「これでこの汚い研究室からゴキどもを駆逐できる」

マツモト:「結局、進化論は人類を選んだわけだ」
細胞研究室で、彼らは部屋のあちこちに細胞を含んだ餌を仕掛けた

次の日、餌はぞっとするほどなくなっていた。

3人は達成した栄光に祝杯をあげるが....


先端細胞研究所は細胞研究の先駆者が所属する研究所である。

DRC(薬物研究機関)は先端細胞研究所から学術レポート受け取り、薬物の調剤研究をする機関。

公共機関の東京都水道局。

先端細胞研究所はたくさんの猿を飼っている。